遺産分割と税理士
1 遺産分割についてお悩みの方へ
遺産分割というと、税理士とは異なる専門家を思い浮かべる方も多いと思います。
実際には、どのような遺産分割を行うかは、税理士の仕事にも、大きな影響を及ぼします。
このため、遺産分割を行うにあたっては、税理士にもご相談いただいた方が良い場合があります。
それでは、具体的に、どのような場合に、税理士にも遺産分割のことを相談すべきなのでしょうか。
ここでは、税理士に相談すべき場面の一例を挙げたいと思います。
2 遺産に土地が含まれている場合
遺産に土地が含まれている場合には、遺産分割について、税理士に相談した方がよいことが多いです。
その理由は、以下のとおりです。
⑴ 相続税評価額が固定資産評価額、時価等と乖離する可能性がある
相続税の計算を行うにあたっては、個々の土地について、財産評価基本通達のルールに基づいた評価を行う必要があります。
財産評価基本通達が採用している評価方法は、相続税申告に特化した、独特のものであることが多々あり、評価結果が、土地の固定資産評価額、時価等と乖離したものとなることがあります。
例えば、一般に、財産評価基本通達によって算定された評価額は、時価の8割程度まで減額されると言われています。
他方、無道路地、傾斜地等については、第三者に売却する場合の時価は著しく低額になりがちですが、財産基本通達によって算定された評価額は、時価よりも高額になる傾向にあります。
このように、相続税の計算の場面においては、土地の評価額が、固定資産評価額、時価等と乖離したものになる可能性があります。
それでは、遺産分割の結果、財産基本通達によって算定された評価額が、固定資産評価額、時価等と乖離した土地を取得することとなった場合には、どのようなことが起きるのでしょうか。
ここでは、財産基本通達によって算定された評価額が、固定資産評価額、時価等を下回る土地を取得した場合を例として挙げたいと思います。
この場合、土地を取得した相続人は、財産基本通達による低い算定結果に基づいて、相続税を計算し、納付すれば良いこととなります。
つまり、相対的に、土地を取得した相続人の相続税の負担が軽減されることとなります。
以上のとおり、相続税評価額が固定資産評価額、時価等と乖離する土地が存在する場合には、相続税の負担が相対的に軽減されたり、反対に相対的に増大したりすることがあります。
このことを踏まえると、土地の相続が問題になる場合は、税理士に相談し、相続税評価によって、相続税の負担にどういった影響が生じるのかについて、検討をした方がよい場合があります。
⑵ 小規模宅地等の特例を用いることができる可能性がある
被相続人が居住していた宅地や、被相続人が事業のために用いていた宅地については、小規模宅地等の特例を用いることにより、限度面積までは、評価額を8割または5割減額することができることがあります。
もっとも、小規模宅地等の特例を用いるにあたっては、一定の要件を満たす必要があり、1つでも要件が欠けていると、この特例を用いることができないこともあります。
例えば、被相続人が居住していた宅地については、遺産分割の結果、被相続人の配偶者、被相続人の同居親族等、一定の親族が取得した場合に限り、小規模宅地等の特例を用いることができるとされています。
もしも、遺産分割の結果、要件を満たさない親族が取得した場合には、小規模宅地等の特例を用いることができません。
このように、小規模宅地等の特例との関係では、遺産分割の結果、誰が土地を取得するのかが重要なポイントになってきます。
この点からも、土地の遺産分割にあたっては、あらかじめ税理士に相談しておいた方が良いことが分かります。